2人の青年紳士が山奥に狩猟にやってきたが、獲物を一つも得られない。
山には強い風が吹き、木々がざわめき、帰り道を見つけることができません。
途方に暮れたとき、青年たちは西洋風の一軒家を発見します。
そこには「西洋料理店 山猫軒」と記されており、2人は店内へと入っていきます。
入ってみると、「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
という注意書きがありました。以後、扉を開けるごとに2人の前には注意書きが現れる。
2人はことごとく好意的に解釈して注意書きに従い、次々と扉を開けていきます......。
(宮沢賢治「注文の多い料理店」)
宮沢賢治(みやざわ・けんじ)
1896(明治29)年8月27日生~1933(昭和8)年9月21日没。岩手県花巻生まれ。ふるさと岩手を心象風景の理想郷"イーハトーブ"と呼ぶなど、独特な感性と自然観で捉えた作品を多数遺す。農業指導・研究家として活動し、教職を務めた後、「羅須地人会」を設立。農民生活向上のため粉骨砕身するが肺結核に倒れ、世を去った。死後、彼の創作は高い評価を受け、国民的作家となる。天体や鉱石に深い造詣を持つなど、その世界は現在でも研究され、多くの人に親しまれている。代表作『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『注文の多い料理店』、詩集『春と修羅』など。